広島大学文学部旧蔵漢籍(現在は大半を広島大学図書館に移管)は、原爆による被災や、昭和から平成にかけて四十年近く費やされたキャンパスの統合移転の他様々な事情によって、長年、整理が滞っていた。申請者は2007~2009年度(平成19~21年度)に広島大学図書館研究開発室、2010年~2012年度(平成22~24年度)には広島大学大学院文学研究科に所属し、広島大学文学部旧蔵漢籍の調査及び目録作成に取り組んだ。広島大学文学部が蒐集した漢籍約4,000点の中には、明本を含む『文選』関係資料・『李卓吾先生批評西遊記-百回繪圖』をはじめとした善本が存する。国内外の研究者の閲覧に供するためには迅速に残りの調査を完了させて、漢籍目録を刊行しなければならない。
この広島大学文学部旧蔵漢籍目録の刊行は、広島大学所蔵資料への評価のみならず、申請者が受講した東京大学東洋文化研究所附属東洋学研究情報センター主催漢籍整理長期研修への再評価にもなる。広島大学文学部旧蔵漢籍目録刊行は、漢籍整理長期研修後、受講者が所属の図書館で漢籍整理を実現するためのモデルケースとして他機関に示すことが可能である。そこで東京大学東洋文化研究所附属東洋学研究情報センターと共同で、広島大学文学部旧蔵漢籍目録刊行を漢籍整理の普及の促進を図るためのモデルケースとして構築し、国内諸機関、特に地方大学における漢籍整理事業のあるべき方向性を提唱する。