相手国機関とのネットワークの構築

(1)相手国拠点機関の特色、研究業績および、相手国拠点機関の選定理由

本事業でのネットワーク構築を考えた場合、(1)アジア比較社会研究の重要さを認識し、(2)自らもデータ分析を行う能力・資質があり、(3)英語を介した研究報告を数多くこなすばかりか、(4)当該地域における若手研究者育成に熱心で、(5)日本側コーディネーターと気心の知れた研究者を抱える、(6)当該地域における社会学研究・教育の拠点が候補となる。こうした条件を同時に満たす拠点は少ないが、本申請における相手国(地域)拠点機関は、これらすべての条件を満たしている。

韓国の高麗大学校社会学科はBK21(韓国版COEプログラム)の指定を受け、その代表を務める尹仁鎭とは、2007年から「海外ゼミ」やグローバルCOEプログラム「アジア地域統合のための世界的人材育成拠点」で協力関係にある。同様にBK21の指定を受けている延世大学校社会学科の韓準とは1999年から連絡を取り続け、「海外ゼミ」やアジア・バロメーターで共同作業をした経験をもつ。中国の中国社会科学院社会学研究所は名実ともに中国における社会学研究の中心で、所長の李培林は中国社会学会会長として、国際比較研究に大変熱心である。中国・復旦大学社会学系主任の劉欣は香港社会学系・呂大樂を博士論文の指導教員としていたこともあり、2006年から連絡を取り続けている。香港大学社会学系の呂大樂とは1997年から、台湾・中央研究院社会学研究所所長の蕭新煌とは1987年からの付き合いで、現在もきわめて緊密な関係をもつ。台湾・台北大学社会学系の蔡明璋(前台湾社会学会会長)、国立シンガポール大学社会学部のTan Ern Serとは、現在でもアジア・バロメーターの再分析プロジェクトで共同研究を進めている。

(2)準備状況

本事業の相手国拠点機関の研究者とは現在も緊密な関係にあり、資金面では、BK21の指定を受けている高麗大学校と延世大学校、国家の重点プロジェクトを多く抱える中国社会科学院社会学研究所と中央研究院社会学研究所は活動資金を多くもつ。その他の研究機関については、本事業による財政的サポートが必要だが、相手国拠点機関の研究者は本事業の重要性を理解しているため、特別な謝金など不要である。

本事業の相手国拠点機関のうち、以下の6つについては、全学協定及び東洋文化研究所との箇所間協定を結んでいるが、もともと東洋文化研究所には専任の社会学者が勤務していなかったこともあって、この交流協定を基盤とした共同研究の実績はない。なお、中央研究院社会学研究所と東洋文化研究所の箇所間協定に関しては、本事業に参加している蕭新煌と日本側コーディネーターの連携によって可能になった。

  • 延世大学校
    (1998年6月25日:全学協定、担当箇所・工学系研究科)
  • 高麗大学校
    (2005年10月28日:全学協定、担当箇所 ・人文社会系研究科)
  • 中国社会科学院
    (2009年1月6日:全学協定、担当箇所・社会科学研究所)
  • 復旦大学
    (1991年10月29日:全学協定、担当箇所・東洋文化研究所)
  • 中央研究院社会学研究所
    (2009年10月30日:予定:箇所間協定、担当箇所・東洋文化研究所)
  • 国立シンガポール大学
    (2000年1月7日:箇所間協定、担当箇所・東洋文化研究所)

(3)申アジア・アフリカ地域の相手国拠点機関との研究協力体制の構築

予算制約上、申請機関がすべての相手国拠点機関と同じ緊密度で研究協力体制を維持することは不可能だが、東洋文化研究所が協定の担当箇所となっている復旦大学、中央研究院社会学研究所、国立シンガポール大学とは恒常的に共同研究を行う予定で、羽田正所長もこの点を今後の活動方針として強調している。

本申請は東洋学研究情報センターのアジア社会・情報分野を中心としているが、同センターが伝統的に強い人文系の研究についても、本申請の相手国拠点機関は研究を蓄積しており、今後はこれらの研究領域の専門家も含めた複合的・学際的な研究交流が作られていくことになるだろう。

現在東洋文化研究所では、研究企画委員会及びアドホックなメンバーによる将来構想ワーキンググループを中心に、今後の研究体制について集中的な検討を行っている最中だが、本申請のようなプロジェクトベースの国際的研究交流を今後とも奨励し、必要とあれば、そこに所長裁量経費を充当する形で研究体制が作られていくことになるだろう。