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電子ジャーナル「當代日本與東亞研究/当代日本与东亚研究/Contemporary Japan and East-Asian Studies」創刊

 2017年8月1日、電子ジャーナル『當代日本與東亞研究』/『当代日本与东亚研究』/"Contemporary Japan and East-Asian Studies" (jeast.ioc.u-tokyo.ac.jp)を創刊いたしました。これは、主に自分達がやっている研究成果を、中国語や英語に翻訳した原稿を発表するプラットフォームで、毎月刊行を目指しています。なぜ「翻訳論文」の月刊誌なのでしょうか?それには2つの理由があります。

 1つ目の理由は、対外発信・研究交流強化のためです。日本の東アジア研究・日本研究は、世界的に見ても高い水準にあります。しかし、その多くが日本語でなされていて、日本語人のジョブマーケットも大部分が日本にあります。したがって、日本では、研究成果の大部分が日本語でなされ、外国語で論文を発表するインセンティブも低いのです。最初からあえて苦手な外国語で査読つきの雑誌にチャレンジする人は少ないですし、著名な雑誌は翻訳原稿など載せてくれません。もちろん二重投稿を避けるのは当たり前です。
 このため、多くの優れた研究成果が、日本語で発表したことにより、国際的には「存在しないのと同じ状態」に置かれています。海外で講演や交流をして、「日本にはそんな研究があるのか!?」と驚かれても、彼等には我々の書いた日本語の本や論文を読めませんから、そこで終わってしまいます。他方、英語や中国語で書かれた論文であれば、大した水準でなくても、多くの人に基礎文献として読まれ、繰り返し引用されます。この不均衡な情況をなんとか打破したいのです。
 ですから、この雑誌には、すでに日本語で発表されたが、中国語・英語読者に読んでもらう価値がある論文を翻訳して載せていきます。実は、我々研究者は翻訳原稿をたくさんもっています。たとえば国際会議等に提出した外国語原稿の多くが公刊されることなく朽ち果てているのです。ほんのちょっと手を加えるだけでそれは公表可能なレベルになります。しかも、書き手は翻訳され、公刊されることが前提になると、より論理的に明確に書こうとして、論文の書き方が変わります。「翻訳されること」は馬鹿に出来ない学術効果を持つのです。

 2つめの理由は教育のためです。私は情報学環のアジア情報社会コース(ITASIA)という、授業から論文執筆にいたるまで全て英語で行う教育プログラムで学生指導をしています。ところが、やってみれば分かりますが、シラバスを作るだけでも大変です。日本語文献を読めないことが前提の学生(実際には少しは日本語ができる北東アジアの留学生が多い)に、何を読ませのか?研究領域にもよるのでしょうが、「あの論文が中国語や英語になっていたら、どれだけ教えるのが楽かわからない」と思うケースが多いのです。知識の累積は、得意な言語によって左右されます。「せっかく日本で勉強しているのに、読む文献は欧米人の書いた論文ばかり」ではもったいない。学生の研究したいテーマぴったりの論文が、日本語でしか発表されていないとしたら、とりあえずは翻訳に頼るのが合理的です。

 当初は論文を掲載する単なるウェブサイトを考えていました。でも、月刊誌にすることで、毎月世界中の研究者仲間に論文をメーリングリストやSNSで配布するリズムを作ろうと思い立ちました。自分達の研究成果をより多くの人に読んでもらい、引用してもらうための工夫です。とりあえずは、自分の関わっている科研費プロジェクトの研究成果を発表する場として使いますが、いずれは、範囲が拡がり、日本の東アジア研究・日本研究を対外的に紹介するプラットフォームに変身することを期待しています。

松田康博(東洋文化研究所教授)


「當代日本與東亞研究/当代日本与东亚研究/Contemporary Japan and East-Asian Studies」



登録種別:センター関連
登録日時:MonSep1113:40:392017
登録者 :松田・黄・藤岡
掲載期間:20170911 - 20180911
当日期間:20170911 - 20170911