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トゥグルカーバードの水門とよぶ。アーディラーバードとトゥグルカーバードとを結ぶ堰堤城壁の北の部分にあり,この堰堤城壁が,トゥグルカーバード城砦の南城壁と接するところに位置する。附図.J-13
この水門は,南北に走る堰堤城壁の一部を切って設けられたもので,東西約6メートル,南北約8メートルの,長方形の平面をもつ構築物である。西に面する上流側も,東側の下流側も,ともに三つのアーチからなっており,これらのアーチは,下流側では,奥深いトンネルになっていて,そのなかに,流水をコントロールするための施設をおさめている。このアーチのなかには,それぞれ矩形の流水孔が設けられており,現在では,中央のものには三列三段の,南北両端のアーチには三列二段の流水孔が認められる。これらの流水孔には,それぞれ,流水をコントロールする施設が設けられていて,この水門が,さまざまな水位において,常に機能し得るように工夫されているのである。平坦な屋上の南北両端には,それぞれ,下流側の南と北とのトンネルに降りる階段がつくられており,また,トンネル相互をつなぐ通路も設けられているので,トンネルの内部に自由に出入りして,コントロールのための操作を行なうことができる。この水門の東には,排水のための地溝がつづいているのが認められる。
この水門の南方約30メートルのところには,堰堤城壁を東西に横切るかたちに,幅約3メートルほどの溝が走っている。この溝は,西から東へ向かってレベルが下がっており,おそらくは,水門と関連してつくられたもので,この溝の底のレベルを越えた分の水を,水門の操作とは関係なしに,西から東へ放出するための溝であったろう。
上述の水門は,トゥグルカーバードとアーディラーバードの両城壁にはさまれ,堰堤城壁の西側にひろがる広大な地域に水を貯え,また,その水を東の方へ流し出す場合の水量調節の役割りをもつものである。このような貯水と流水調節とが,どのような目的のために行なわれたかは,極めて興味ある問題であり,さまざまの観点から,論議されなければならないであろう。第Ⅱ期。
東研.Ⅹ-4-3

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