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アーディラーバードの堰堤城壁とよぶ。アーディラーバード城砦の東の部分の北側,トゥグルカーバート城砦の東南部分の南側に位置している。附図.J-13
この堰堤城壁は,アーディラーバードとトゥグルカーバードとを南北に結ぶ,幅約120メートル,長さ約300メートルにおよぶ構築物であるが,その東南の石積みは,アーディラーバードの外城壁にそのままつづいており,いわば,アーディラーバード城砦の外城地区の延長部分ともいえるものである。この堰堤城壁は,上述の堰堤IおよびⅡとは異なって,規模がはるかに大きく,また,東面の石積みの特徴についても,また,バスティオンやバットゥルメントをそなえた外観においても,両城砦の城壁といささかも異なるところがない。
この堰堤城壁は,トゥグルカーバード城砦と,アーディラーバード城砦南方の丘陵地帯とにはさまれた,広い平坦地に対する大水利計画の根幹となる構築物で,この平坦地に貯水することが第一の目的であったのであろう。この堰堤城壁の北の部分には,のちに記す水門が附属していて,この平坦地に貯えられた水を東方へ放出し,また,適時,流水量の調節をも行なうことができるようになっている。この堰堤城壁とそれに附属する水門の構築目的や機能については,大水利計画の問題や,さらには,二つの城砦とその周辺地城の開発の問題などとの関連において,さまざまな角度から検討されることが必要であろう。第Ⅱ期。
東研.Ⅹ-5-1

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