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フィーローズ=シャー=コートラの円井戸とよぶ。デリー門の東南約700メートル,マトゥラ=ロードの東約300メートル,フィーローズ=シャー=コートラのなかの北の部分にある。附図.I-6
中央に円い井戸をもつ円形の建造物で,外側からみると一層であるが,内部は,二層になっていて,各層は奥の壁に壷をつらねた列柱式の廻廊をなしていたものと思われる。東と西の対称の位置には,円形の部屋があって,外部に通じる出入口をもっている。水は,いったん,井戸から屋上に汲みあげられ,そののち,溝とパイプとを通って,その一部は外側の水槽に貯えられ,また,他の一部は内側に導かれて,奥の壁に設けられた龕をつぎつぎに通って,巧みに配分されるしくみになっている。この水は,それぞれの盆に設けられた小さな水受けにたたえられ,余った水は,ふたたび井戸にもどされる。なお,下の層の東側の部屋から,ジャムナー河の岸辺に向かって地下溝が通じているが,これは,必要に応じてジャムナー河から水をとり入れるためか,あるいは他のなんらかの目的のために設けられたものと考えられる。
フィーローズ=シャー=コートラの城砦は,同時代の史書の記述によって,トゥグルク朝のフィーローズ=シャーの治世に設されたことが知られるので,この井戸もまた,その時代に属するものと考えてよいであろう。
現在では,廻廊の列柱部分はほとんど崩壊し,また,井戸の水は汚濁をきわめていて,往時のおもかげをとどめていない。第Ⅱ期。
東研.Ⅱ-4-3;cf.ASI.Ⅱ-115