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総じて言えば、近年大陸では情報公開が進み、閲覧システムも10年前に比べても隔世の感があるほど便利なものになった。しかし、そうはいってもこのシステムの中に中国の伝統社会の「人際関係」が色濃く残存していることも否定できない。外国の機関の紹介状はあまり意味を持たず、中国国内機関の紹介状を求めることが多いこと、いくつかの部局を通さなければ閲覧の許可が下りず、不必要な時間を要すること、「百通の紹介状より一人の知り合い」といった人と人との関係に基づいて閲覧許可の可否が決定されることなど、なお多くの課題を残している。これは近年台湾の歴史文献収蔵機関と全く対照的といってよい。大陸でも上海図書館など一部の機関では意識的に改革を進めているが、まだ少数派であることを否定できない。 この状況が当分変わらないまま、外国人が中国の歴史文献収蔵機関を快適に利用しようとすれば、どうすればよいか。少なくとも中国国内の機関、ないしはその機関に属し、その機関の公印を捺した紹介状を気軽に発行してくれる研究者を友人に持つこと、また閲覧を必要とする収蔵機関には定期的に出向き、受付の担当者に自分が何者であるかを個人的に記憶させ、その記憶を持続させることが必要である。中国では、その人が誰であるかを覚えていることを「認識」というが、その「認識関係」によっていろいろな交渉が成り立っていることをゆめ忘れてはならない。 以上、本稿では、筆者が近年北京、江南、台湾の各中国歴史文献収蔵機関において直接知りえた範囲のなかで、その情報を紹介した。冒頭でも記したように、近年の中国(台湾をも含めて)の図書館利用状況は毎年変化しているため、ここではとりあえず現況を書き留めた。 最後に、本稿作成に当たり佐藤仁史氏から多大な協力を受け、また、同「学術リソースレビュー・中国近現代史」(『漢学文献情報処理研究』4号、好文出版、2003年)も参考にさせていただいたことに対して感謝したい。 |
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