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『イスラム事典』について
『イスラム事典』(総502ページ)は、日本におけるイスラム世界に関する初めての総合的な事典として、1982年に刊行されました。すでに14刷30000部を超え、当該領域の専門研究者のみならず、学生・教員・ジャーナリスト、あるいは他分野の研究者にも、広く利用されています。これは、編集にあたって、当時イスラム研究の唯一の専門研究団体である日本イスラム協会が監修の任を負い、その中心メンバーであった故嶋田襄平(前中央大学教授)、板垣雄三(東京大学名誉教授)、佐藤次高(東京大学教授)が項目選定および原稿のチェックにあたり、専門研究者100名が執筆、まさに学界が総力をあげて取り組んだためです。各項目の平易ながらも質が高い記述のゆえに本事典の信頼度は高く、高校や大学での教育、あるいはジャーナリズムにおいても、必携の書となっており、原綴やカタカナの表記の点でも学界や教科書の典拠とされています。
事典は、総説(イスラム、イスラムの国家と社会、歴史の中のイスラム教徒)、事典項目(825項目)、付表(年表、系図、参考文献など)の3部構成となっています。『イスラム事典』は、日本の読者のために単に日本語で執筆されているというだけでなく、日本のイスラム・中東認識を意識した項目の編成をとっています。たとえば、専門用語による立項だけでは予備知識のない利用者にはアクセスが難しいことを考慮し、裁判、婚姻、女性、子供といった一般概念を項目として立てて読者の導入をはかったり、スワヒリ、スーダン、スマトラ、日本、ヨーロッパといった地域名からイスラムとの交渉史が理解できるように配慮されています。また、中東・イスラム研究の分野では、専門的な事典として、Encyclopaedia of Islam (1st ed., 1913-38, rep. , 9 vols.,1987: New ed., 1-9 vols.+, 1979) が最高峰の事典として知られていますが、新版は完結していないうえに、10巻をこえる分量です。これを1巻にまとめた Shorter Encyclopaedia of Islam (1953)がありますが、宗教関係の項目が多くを占めています。『イスラム事典』は、狭義の宗教としてのイスラムだけではなく、「生活・文化の体系」として、また地域的にはアフリカや東南アジア・中国まで目配りをしながらも、1冊の事典にまとめていることが特徴になっています。
事典については、平凡社宛にお問い合わせください。
また、『イスラム事典』の改訂新版である『新イスラム事典』(2002年3月刊)については、http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=126033をご覧ください。
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