04/09/02 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
国立国会図書館関西館 アジア情報室 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
開設3年目を迎える国立国会図書館関西館のアジア情報室 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
富窪 高志 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(資料部アジア情報課長) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
国立国会図書館関西館のアジア情報室は2002年10月にサービスを開始したが、その源流は、国立国会図書館設立時(1948)の中国語資料閲覧室に遡ることができる。爾来、所管資料や対象とする地域の変遷等に伴い、アジア資料閲覧室、アジア資料参考室、アジア・アフリカ資料室、アジア資料室(1986)と名称を変更してきたが、50余年にわたり、中国語、朝鮮語を中心とするアジア言語資料の収集と情報サービスを提供してきた。この内、最も根本的なものが、1986年の東京本館新館完成に伴う機構改革であった。すなわち、アジア言語資料に関する選書・受入れ、整理、保管、資料提供・レファレンス・サービスまでを一貫して行う体制となり、これは現在のアジア情報室とその運営・管理に当るアジア情報課にも引き継がれている。 東京から京都にアジア情報サービスの拠点は移ったが、政治・経済から文化にわたる幅広い分野におけるアジア諸国とわが国の間の、「人」「モノ」「情報」の流通量増大を背景に、従来にも増して立法・行政・司法各部門へのサービス、国民へのサービス、アジア研究の支援を図ること、そしてアジア情報の国際的流通へ貢献することが、アジア情報室の目標である。
上記のような歴史的経緯もあり、アジア情報室の所蔵資料の圧倒的多数を占めるのは中国語と朝鮮語資料である。この数年の収集量は、年間平均で中国語約2,000冊以上、朝鮮語1,000冊である。政治・経済・社会などの社会科学から、歴史・地誌・文学などの人文科学分野等、幅広い分野をカバーしている。2004年7月末現在の所蔵状況は、表「関西館アジア情報室の所蔵統計」を参照いただきたい。
中国語図書には、1950〜80年代にかけて上海の新華書店に送られてきた様本(見本本)のコレクションである「新華書店旧蔵書」約17万冊が含まれている(写真参照)。いわゆる稀覯書・珍本の類はないが、この時期の出版物をいわば網羅的に集めたもので、これだけの大量の資料が国内で利用できることの意味は大きく、思わぬ発見が期待できる資料群であろう。 雑誌は、科学技術関係も含め質量ともににかなり充実している。関西館開館を契機にタイトル数の増を図り、新聞についても中国、韓国の省、道レベルまでの地方紙を収集している。 検索の便を図るため、アジア言語資料のデータベース化を進めている。現在、アジア情報室所管の中国語、朝鮮語資料はすべてアジア言語OPAC(http://asiaopac.ndl.go.jp/)で検索できる。上述の「新華書店旧蔵書」についても精力的に入力を進めており、すでに一部はアジア言語OPACに搭載済みである。今年度中には9万冊、そして残りについても数年内にはすべて搭載の予定である。
2-1 概要 関西館地下1階の座席数350の大閲覧室の西側部分がアジア情報室で、東側の総合閲覧室と一体となった構造である。閲覧室からは、関西館敷地となった以前の雑木林をイメージした中庭が見渡せる。 開架資料だけでも、十分な基本情報やカレントな情報が入手できるよう、約30,000冊規模の年鑑類を含む参考図書、基本図書、雑誌、新聞を公開している。図書は、基本的には地域別に分け、その中は国立国会図書館分類によって排架している。一覧性を高めるため、アジア諸言語、日本語、欧文資料を混架し、辞書、百科事典、地図については独立したコーナーを設けている。 新聞は前述した中国、韓国の各省、道のものから、アジア主要国の代表的新聞を約180紙、雑誌も中国、韓国刊行を中心に、日本語、欧文誌を含め約800誌が開架で利用できる。 アジア言語OPACの検索端末(15台)のほか、中国の「文淵閣四庫全書」「人民日報図文数拠庫」「古今図書集成」及び「韓国博士・修士学位論文総目録」「定期刊行物記事索引」が検索できる「韓国国会図書館文献情報2001」などのCD-ROMも利用することもできる。 また、アジア情報室では隣接する総合閲覧室の資料も自由に閲覧することができるようになっており、統計等の各種データの相互比較等に便利である。 アジア情報室のホームページは、開架している雑誌や新聞および利用できるCD-ROMのタイトルを載せているほか、アジア言語OPACや冊子体目録の紹介、FAQ、関連リンク集なども充実しているので参照願いたい。 ★★★ http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/index.html なお、「関西館まで行くのは・・・」と思われる方も、アジア情報室の資料は開架資料などの一部を除いて、東京本館に取寄せて、また所属の図書館を通じて借り出して利用するなど、直接来館しない利用方法もあるので是非活用していただきたい。 2-2 アジア情報室の利用傾向 前述したようにアジア情報室という区切られた空間ではないのではっきりした比較はできないが、東京本館のアジア資料室と比較すると利用者が半減していることは否めない。大阪からも京都からも約1時間を要するという交通アクセスの問題も底流にはあろう。開館2年目になる2003年度の書庫資料の出納冊数は、2001年度の約43%であった。 よく利用される資料群は、中国と韓国の新聞、雑誌であり、とりわけ中国語資料の利用が多い。雑誌も、自然科学を含め、中国の大学学報類がもっとも良く利用されている。この傾向は東京本館時代とほぼ同様であり、大きな変化は見られない。分野別では人文科学分野では考古学、歴史、文学関係、社会科学では経済、貿易、人口、環境関連資料が比較的よく利用されている。これらを総合すると、利用者層について調査はしていないものの、書庫資料の利用者は学生、院生を含む近隣地区の研究者であろうと推測している。継続利用者も徐々に増加しており、また7〜9月にかけては遠方からの利用もある。アジア情報室の存在が少しずつではあるが、認識され始めているのではないかと思う。
(1)東南アジア資料の収集 東南アジア刊行資料については、米国議会図書館(LC)ジャカルタ現地収集事務所の共同収集計画に参加している。これは、収集対象国について指定した分野、言語に基づいて資料を送付してもらう方式である。本年10月で、このプログラムに参加して7年目に入る。これを機会に対象国を従来の4ヶ国(インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)からカンボジア、ラオス、フィリピン、タイ、ベトナムを加えた9ヶ国に拡大する。同時に、分野も拡充し、言語についてもこれまでは英語を主としていたが、選択した全分野について現地語も指定する予定である。 (2)電子ジャーナルの導入 中国語雑誌は科学技術分野も含め、もっとも利用が多い資料群である。そのニーズに対応するため、「中国学術雑誌全文データベース」の導入を実現したいと考えている。すでに国内でも一部の分野が導入されているが、アジア情報室としては全分野を導入したいと考えている。予算、利用契約等の面でクリアすべき問題が残されているが、今後、中国情報の重要性が増大することを考えると、全分野を導入することの意義は大きいと思う。 国内のアジア言語資料状況は、「豊富な中国語・朝鮮語資料に比べれば、アジアのその他の言語資料は・・・」と指摘されることが多い。確かに、アジア情報室が対象とする南アジアや中東・北アフリカ、中央アジアの資料については、ペルシャ語資料など一部を除いては特に言及すべきものを所蔵しておらず、今後の大きな課題である。また、中国語・朝鮮語資料にしても、LCをはじめとする北米大学のアジア図書館と比較した場合、当館を含め国内の中国語・朝鮮語コレクションは「豊富」あるいは「十分に整備されている」と形容するにはまだまだ心もとない状況ではないか。これらの点を踏まえ、アジア情報室は、引き続き中国語、朝鮮語資料の充実を図るとともに、LCの共同収集計画を通した収集によって東南アジア地域刊行の資料構築の基礎固めを行っていきたいと考えている。
地域研究を推進する研究機関を中心として学会、関連COEプログラムなどが参加する「地域研究コンソーシアム」が今年4月に発足した。活動計画のひとつとして、研究の基盤として「地域研究データベースを構築し、研究情報の相互利用を促進」することが挙げられている。「資料・情報のネットワーク構築」という意味では図書館も無関係でなく、図書館間の連携・協力は勿論、情報の生産者であり同時に利用者である学会、研究者との連携・協力がアジア情報関連機関には強く望まれている。2002年度から開催している「アジア情報研修」、「アジア情報関係機関懇談会」は、そうした連携・協力の一環として取り組んでいるものである。各機関のご協力を得て、年内には「アジア情報関係機関ダイレクトリー」を作成し、ホームページで提供する予定である。 アジア研究とニーズの動向、資料の流通上の問題、さらに関連機関間の協力と分担の可能性といった大きな外部状況と、幾多の課題に応えていくための人材確保という内部的課題も念頭に置きながら、資料構築をはじめとするアジア情報提供の活動に取り組んでいきたい。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||