04/08/11 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アジ研図書館への誘い | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
泉沢 久美子 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(資料企画課長) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1999年11月東京都心の市谷から千葉市幕張新都心への移転後は、4階建て図書館、収容予定冊数100万冊、閲覧席100席を確保し、開架書架方式の快適な図書館となった。 市谷時代は50万冊もの膨大な資料を書庫に納めきれず、一部を外部倉庫に預けざるを得ない状態だったが、今や広大なスペースを得て図書館の使い勝手も格段に良くなった。長年働く我々でも今まで気づかずにいた貴重書の「発見」があるなど、改めて40年以上に渡るコレクションの凄さが実感できるのも新たな器によるところが大きい。 しかし、東京に何でもあるのが当然と考えている方々にとって、幕張は「非常に遠い・不便な場所」という印象が強いようだ。そんな方もぜひ一度、足を運んでいただきたい。絶対、研究のモティベーションを上げてくれる図書館だと自負している。 ここでは、アジ研図書館の特色あるコレクションを中心に大いにPRさせていただき、アジ研図書館への誘いとしたい。なお、アジ研図書館ホームページに詳細な情報が載っているので、そちらもあわせてご覧いただきたい。
蔵書の柱となっているものは、開発途上国刊行の一次資料である。特に、精力的に収集しているのが統計資料。各国政府の一次統計と国際機関編纂の統計類を合わせて約15万冊に及ぶ。 各国総合統計年鑑、人口、工業、農業等の各センサス類、生産、貿易、社会、金融、国家財政などの個別統計類は、ほとんど現地統計局や中央銀行から直接購入や資料交換によって集めたもの。 もちろん、中央アフリカなどのように入手経路が開拓できない国や、刊行部数が少ないため、入手し損ねたものも少なくないが、1916年創刊から全て所蔵する「タイ統計年鑑」、後年になってマイクロフィルムで入手した1909年創刊の「エジプト統計年鑑」など、20世紀始めから刊行された開発途上国の統計年鑑類はかなり充実している。また、インドの中央・地方統計局刊行のセンサス類の量は圧巻。最近のものでは、1996年人口センサスをはじめ、遊牧民センサス1998、工業センサスなどイランの1990年代センサス類1,000冊があり、国内ではおそらくアジ研図書館のみの所蔵であろう。
これまで収集した新聞は84カ国約360を数え、マイクロフィルムで保存している。このうち現在受入中の新聞は145紙。非常に入手が困難であった湾岸戦争以降のイラクの新聞Al-Ba’ath、フセイン政権崩壊後に刊行されたAl-Sabahなど、特殊なルートで入手している貴重な新聞もある。 近年、インターネット上で最新の新聞にアクセスできるため、速報性においてはインターネット版に劣るが、やはり、何日分もまとめて読める利便性は紙媒体が優っている。また、現地の政治・経済・社会状況について遡及的に調査する上で、新聞のバックナンバーは大変貴重な資料。学生の論文執筆が本格化する9月以降にはマイクロフィルム版の新聞利用者は引きもきらず、3台のマイクロリーダーはほぼ満席状態となる。特に、中国、東南アジアの新聞閲覧者が多いが、中東、ラテンアメリカ、アフリカの新聞も比較的揃っている。なお、2003年3月に以下のような新聞のマイクロフィルム版を購入した。
継続収集は東南アジア諸国が中心。そのなかでも1865年第2巻から所蔵しているタイ王国官報(1934〜58年欠号)をはじめ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、インドネシア、ベトナムが充実している。 また、植民地解放後の新生大韓民国政府公報処発行の「官報」を原本で1948年9月1日第1号より1976年5月31日第7359号まで所蔵。朝鮮戦争の影響で本国でも完全保存されていないとのことで、日本では国会図書館と当館のみのようである。最近では当館所蔵の原本を使ってCD-ROM版(すずさわ書店刊)が刊行された。アジア以外ではエジプト(1955-69年:欠号あり)、サウジアラビア(1924-60)、チリ(1966-1993)の官報などもある。
欧米の地域研究雑誌を含めて、約1,400誌を継続受入中。この中には現地の社会情勢を逸早く報告する現地語週刊誌や、研究機関の機関誌なども数多く含まれる。国内の代理店が取り扱わない雑誌も少なくないため、当館では直接購入や資料交換によって入手にすることが多い。新聞購読もそうだが、現地との直接取引はトラブルも多く図書館員泣かせ。しかし、創設当初から地道に続けている当館ならではの収集方法。
53,130枚を所蔵し、東アジア、東南アジアを中心に5万分の1の地形図もかなり充実している。特に最近、10万分の1の中国、パキスタン、シリア、20万分の1の旧ソ連の地図を購入。旧ソ連の官製地図であるため、地名はすべてキリル文字で書かれているが、他では手に入らない貴重なものであるため、利用者が多い。 最近入手した「Atlas of the Near and Middle East: History, geography & cultural anthropology(TAVO)」は歴史地図、民族分布図、考古学地図、パレスチナ関係地図などを含む200枚以上にも及ぶもので、中東研究者には一見の価値がある。地図のコピーも可能。
現地語のみで書かれた図書は、言語別に配架されている。千冊以上の所蔵は、中国語約25,000冊、コリア語約15,000冊、アラビア語約5,000冊、インドネシア語3,700冊、タイ語3,000冊、ベトナム語1,600冊。当館にしかない貴重な資料も多い。今後は益々充実させる必要があろう。
まず先に、当館の蔵書検索(OPAC)をしてから来館されるとよい。大学図書館のOPACと異なる特色としては、
ここで言う「雑誌記事索引」とは当館が創設当初から作成している開発途上国関係の和・洋雑誌記事索引で、1986年からデータベース化し、現在のデータ数は約22万件。「地域コード」とは、アジア、中国といった地域、国に関する文献を絞り込みできるように当館が独自に設けた4文字コード。たとえば、「AECC」は中国のコードで、上1桁目のAは大地域のアジア、上2桁AEは中地域の東アジア、3・4桁目のCCは中国を表す。大地域、中地域の包括的検索や特定国の検索、あるいは予め地域コードを入力してから政治、経済など主題で絞り込むことができる。 さて、個別の図書館OPACよりも断然NACSIS Webcatを使っている方が多いかもしれない。しかし、残念ながら当館の図書約30万冊のうちWebcatで検索可能なものは、約12万件のみである。諸般の理由で、統計資料、あるいは1990年代以前の経済、政治分野の図書は未登録。当館のOPACでは、統計資料を含め約23万冊が検索可能なので、こちらをぜひ利用していただきたい。 いまやインターネットでの蔵書検索は図書館の基本的サービスである。ここ数年中に例外的な文字を除いて全蔵書のデータベース化を目標にしている。2004年度中には韓国語、アラビア語図書データの登録が完了する予定で、今後は、中国語図書のデータ登録、あるいは検索に問題がある統計資料のデータ修正を進めていきたい。
いま一押しのサービスが2003年7月から開始した「新着アラートサービス」。 これは、利用者がインターネット上で各自の関心地域や事項を登録しさえすれば、それに適合した新着文献情報が定期的にEメールで送られるというもの。特定分野の文献を常にウォッチしたい方にお勧めしたい。(1)図書SDIアラート、(2)雑誌記事索引SDIアラート、(3)最新号アラート(対象雑誌約5,500タイトル)の3種類のサービスがあり、2004年7月末現在で約420名が利用している。 当館としては来館者を増やしたいのが本音だが、アンケートの結果を見ると、これを通じて得た文献を他の図書館で利用している人が多いようだ。たとえどこの図書館で利用しようと、新たに収集した途上国資料についてできるだけ多くの方に情報提供したいというのが我々の心意気である。なお、配信された文献については図書館を通じた貸出、あるいは個人での文献複写依頼も可能。
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