| ■ 沿革と概要 |
|
国立中央研究院は理系・文系を併せた国立の総合研究所で、元来大陸にあった組織が台湾に移ってきたもので、その広大な敷地と規模に圧倒される。歴史関係では近代史研究所、歴史語言研究所、台湾史研究所などがそれぞれ独立した組織と建物を持っている。
歴史語言研究所の傅斯年図書館、近代史研究所の郭廷以図書館には内外の図書や工具類が充実している。大陸出版物はほとんどそろっているといってよい。以前は香港や日本の書店を通じていたが現在は直接大陸から購入するという。日本では値段が高いためにおいそれとは見かけない『四庫全書存目叢書』などの大規模叢書があちこちにある。また、大陸でしか見ることのできない史料をマイクロフィルムでコピーしたものもかなりの量が見られる。なかでも圧巻は王ト欣・周紹泉主編『徽州千年契約文書』全2編(石家荘・花山文芸出版社、1991年)に収められていない北京の社会科学院歴史研究所蔵の徽州文書の原物大の膨大なコピーである。さすがに徽州文書を専門にする人は台湾ではまだ少なく、あまり利用されていないが、「お宝」であることは間違いない。
|
| ■ 古籍の電子化(歴史語言研究所) |
|
ところで、中央研究院の特徴の一つとして漢籍電子文献資料庫のことについて触れておかねばならない。1997年から始められた計画はその後漸次発展し、今では院内の各研究所がいろいろなものを競い合って資料庫を作っている状況である。なかでも歴史語言研究所では『二十五史』(39969533字)、『十三経』(8600316字)がすでに完成し、加えて漢籍全文資料計画が進行中という。対象とする漢籍は『資治通鑑』や『十通』等、比較的古い時代のものから始められたが、研究所の世代交代が進んだ結果、明清のものが中心になってきたという。『明実録』(15313039字)はほぼ完成し、館内では検索が自由にできる。何かキーワードを入れると、その語が含まれる該当箇所の全文が一括して現われる。こうしたことをやるためには133冊もある印刷本を片端から見ていかねばならなかった今までのやり方からすれば画期的なものである。しかもさらに驚くべきは、この『明実録』の優に二倍半はある『清実録』も入力がまもなく完成するという。
|
| ■ 古籍の電子化(明清档案館) |
|
歴史語言研究所にはもうひとつ有名な明清档案館がある。ここはかつて北京の紫禁城内の内閣大庫が所蔵し、戦後の1949年に国民政府の軍艦で台湾に搬入された膨大な文書を収めた文書館である。歴史語言研究所はもともと1928年に大陸で設立された研究所であり、膨大な文書の整理を行っていた。台北の研究所はその事業を継続し、近年それを本格的に整理しただけでなく、電脳によるデータ処理を行い、検索をきわめて容易にした。内閣大庫の档案は題本と呼ばれる臣下の上奏文が多くを占め、しかも清初の記事が重要である。例えば一人の人物名で検索をかけたとしよう。本人が上奏した文だけでなく、他人がその人物に触れた文をも含めた一覧表が現れる。閲覧者はそのうちの一つの画像マークをクリックすれば、文書が画像になって映し出される。そして印刷のバーをクリックすれば、必要な個所が印刷されて出てくる。よくぞこれだけ膨大な史料群のデータ処理をかくも短時間にできたものだと改めて思う。明清档案と呼ばれる手書きの行政文書は現在、総数31万件、このうち整理が終わったものは件ごとに紙製ケースに保管されてデータベース化されており、未整理のものも逐次作業が進められている。
|
| ■ 参考文献 |
|
なお、台湾の研究機関によるデータベース化の状況は、堀地明「台湾における清代档案史料のデータベース化とその利用」(『東方』265号、2003年)に詳しい。
|
|
(2002年12月現在) |