■ 沿革と概要 |
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中国第一歴史档案館は特に明清時代の王朝行政に関わる原文書を集中的に収蔵しており、明清時代の根本史料の宝庫≠ニいってよい。その歴史は古く、1925年10月に故宮博物院が正式に成立した時に始まる。中華人民共和国成立後は、中央档案館の一部として明清档案部と呼ばれる時もあったが、1980年4月、国家档案局が接収し、正式に「中国第一歴史档案館」として発足した。ちなみに「中国第二歴史档案館」は南京にあり、中華民国時代の中央档案を収蔵する。
中国第一歴史档案館の収蔵档案は74全宗一千余万件に及ぶといわれる。明代のものは約三千件と比較的少ない。その大部分が、「内閣档案」「軍機処档案」「宮中各処档案」「六部档案」などと呼ばれる清代の中央国家機関の行政文書である。また、皇族関係の档案や「順天府档案」等一部の地方行政機関文書を含んでいる。
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■ 利用手続 |
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建物は故宮の敷地内にあり、その西門に当たる西華門から入る。西華門には門衛がいて入館者をチェックする。第一歴史档案館に行くと言えば、たいてい問題なく入れてくれるが、ときに目的を尋ねられることもある。「これまでに来たことがある」という事実がなぜか重要である。
開館時間は土日を除く毎日8:00−16:00であり、昼休み休憩は現在なくなった(ただし、金曜日は15:00で閉館)。7−8月の夏季は、「炎熱」のため、月〜金はともに14:00で閉館になる。まず、入り口で鞄を預け、受付で登録する。外国人はパスポートだけで十分であるが、やはり国内機関の紹介状はあった方がよい。ただし、館内に知人がいる場合はこの限りではない。初めての場合は来館の目的、日本での所属と身分、研究テーマなどを詳しく記した書類の提出が求められる。
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■ 档案の検索 |
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档案の検索は館内に備え付けられた目録で行う。以前はこうした目録の閲覧は職員に限られていたため、閲覧者は自分の研究テーマもしくは閲覧希望の内容を係員に報告し、その係員がそれに該当すると思う档案を自分で判断してもってくるというのが一般的であった。それに比べれば、ずいぶん便利にはなったが、もしわからなければ、係員に尋ねるのが今でも一番よい方法である。また、まだ一般公開されていない目録も存在する。目録室は入り口右手に移され、改装されて立派になった。ただ目録は館内備え付けの冊子のみで、電脳化はいまのところ進んでいない。冊子になった目録は膨大な数になる。清代の軍機処録副とよばれる行政文書などは地域別、年代別、上奏者別のそれぞれの目録がある。これなど電脳にデータを打ち込めばそれで済むと思えるのだが。結局、中国第一歴史档案館は現在の時点では大変動は当分期待できないということか。
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■ 閲覧と複写 |
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档案の閲覧は右手奥の閲覧室で行う。現物を閲覧する部屋とマイクロフィルムを閲覧する部屋に分かれる。現物を閲覧する部屋では書写には鉛筆使用が原則になっている。マイクロフィルムによる複写を請求することができる。マイクロフィルム一件で2.5元の費用がかかる。欠点の第一は一度にあまり多くの件数を請求できないことである。百件を超えると拒否されることが多く、書写を求められることがある。第二は受け渡しに郵送がきかないことである。依頼者は必ず来館し、現金と交換しなければならない。出来上がりには約二週間を要するので、それまで北京に滞在できない短期訪問者の場合は、留学生か誰かに代理人を依頼する以外には方法がない。
なお、中国第一歴史档案館では館内収蔵の档案を影印した洋装本史料を多く刊行しており、館内でも販売している。自分がいま収集している档案が近い将来において出版する予定があるかどうかを係員に確認しておいた方が貴重な時間をロスしなくてよい。
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■ 飲食施設 |
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昼食は館内の休憩室にカップ麺やパンなどの食料を持ち込むのが時間の節約になる。もう少しまとものものが食べたいと思えば、いったん西華門を出ると、いくつか食堂がある。澤園酒家や龍爪居など有名なレストランでゆっくり食事することもできる。
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■ 参考文献 |
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中国第一歴史档案館については、中国第一歴史档案館編『中国第一歴史档案館蔵档案概述』(北京・档案出版社、1985年)や秦国経『中華明清珍档指南』(北京・人民出版社、1994年、26‐127頁)に紹介がある。
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(2003年11月現在) |