香港

留学ガイド:香港

                                                                        阿部 典子

私は2007年9月から2008年3月現在まで、香港中文大学・日本研究学科のMAコースに在学しています。以下、限られた情報になってしまいますが、私の経験を記します。

1 香港留学について
香港へ留学する場合、以下の数種が考えられます。
・語学留学
・大学(本科)での学部留学(undergraduate)
・大学院(Post graduate)でのMA留学
・大学院(Post graduate)でのMPhil留学
・大学院(Post graduate)でのPhD留学
語学留学の場合は、広東語か北京語が中心になるでしょう。香港大学や中文大学などの大学機関や外部の語学学校が開設している語学コースに通うことになります。それぞれ学生ビザが発行されるかどうかの確認が必要です。また大学(本科)への留学も私自身が経験したことがないため詳細はわかりませんが、交換留学以外の方法で本科に通っている日本人学生もたくさんいらっしゃいますので可能でしょう。以下、大学院への留学を念頭にお話します。

≪大学院(研究院)への留学≫
修士として学ぶ場合、MAとMPhilの2種類があるのが香港の特徴です。まずMAとは、コースワークだけで取れる(論文執筆不要の)修士のコースです。学生はほとんどが社会人なので、平日の夜または土曜の日中に授業が行われることが多いです。1年で卒業となるパートタイムか、2年間学ぶフルタイムかを選べますが、学生ビザを取得するならばフルタイムを選択する必要があります。香港では現在MAブームといってもよい状況で、中文大でも多種多様なMAコースが開設されています。
他方MPhilとは、個人でのリサーチ及び論文執筆が要求されるコースで、フルタイムが原則です。日本の大学院の、一般的な修士課程に相当するのはこちらです。よって入試もMAに比べると難しくなっています。PhDも含め、中文大学研究院で開設されている全てのコースの概要、応募資格、応募方法などは、以下にリスト化されています。

中文大学 研究院:
http://www.cuhk.edu.hk/gss/admission/main_pro_list&equ.html

尚、私は「日本語及び日本語教育」というMAプログラムのフルタイムの学生として在籍しています。香港人(および中国人)に対する日本語教育を専門的に学ぶコースで、実際の学習者を集めて行う教育実習の授業があるのが特徴です。MAコースの学生は約3分の2が香港人、残りが日本人で、中国本土や台湾からの学生も数名います。年齢も20歳から50代までさまざまで、色々な世代と文化が交じり合ったクラスになっているのが面白いところです。授業は日本語で行われます。

≪学期≫
第一学期: 9月初め~12月中旬
第二学期: 1月初旬~4月中旬(春節休み1週間を含む)
夏学期  : 5月中旬~6月下旬(開講されない場合もある)
各学期が始まる前にコース登録期間があります。インターネット上で登録できるので、必ずしも香港にいなくても構いませんが、登録し忘れると後々面倒なので期間だけはチェックしておく必要があります。

≪奨学金≫
私は私費で留学しているため、残念ながら詳しい事情はわかりませんでした。ただ現在留学中の方の話では、ロータリークラブ奨学金では留学先として香港が選べるそうです。
下記は中文大学の奨学金関連事務所のウェブサイトです。事務所によると、海外からの留学生でも申請できる奨学金があるとのことで、ここから調べてみるのも一つの方法です。

Office of Admissions and Financial Aid:
http://www2.cuhk.edu.hk/oafa/fees_fees.php

2 渡航前の手続き
≪入試≫
私のMAコースでは、以下の書類(は全て英語か中国語)を提出する必要がありました。
・大学卒業証明書
・大学成績証明書
・推薦状(2通必要)
また、電話での面接も行われました。その他TOFLEの成績等が必要な場合もあり、学部・学科によって異なるので確認が必要です。合格発表は第一報がウェブ上で行われ、その後書面での通知があります。もちろん日本へも送付されます。提出すべき書類は明確にリスト化されているので、これに沿って行えば決して難しくありません。

≪学生ビザの申請≫
申請自体は大学が代行してくれるので、入学手続き書類とともに送られてくる入管提出用のビザ申請書類に記入し、手数料とともに大学宛に送り返すことになります。手数料は私のときは400香港ドルで、海外送金小切手のかたちで送りました。ビザ発行には1ヶ月もしくはそれ以上掛かるようです。ビザはシール状になっていて、自分でパスポートに貼ります。入境した日付から1年間が有効期限です。入学手続きをするためには、この学生ビザを使って香港に入境している必要があります。日本人はビザがなくても香港に入境できてしまうので、うっかりすると忘れてしまい、再びイミグレーションに行くはめになってしまいますので、事前に貼っておいた方が安心です。

3 香港到着後の手続き
≪入学手続き≫
私の場合、主に以下の手続きが必要でした。
・各種書類の提出
・学費の払い込み
・香港IDの申請
・学生証の取得 
書類の提出は研究院教務課の窓口で行います。各種書類の提出→学費払込書が手に入る→学費を払う→入学が認められる→学生証が取得できる、という流れでした。また学生証を発行するためには、香港IDを取得していなければなりませんでした。
経験より、大学のオフィスや政府機関は日本ほど面倒見がよくありません。「実はこんな書類も必要だった」等々、後から言われることもしばしばです。初めてオフィスを訪れた際にしつこいくらいに尋ね、必要な手続きを全て明らかにした方が後々の面倒を避けられると思います。

 

 

 

 

 

 

※入学手続きを行う研究院教務課の建物(「研究楼一座」)【左】とその近くの遊歩道【右】

≪学費の払いこみ≫
払込書とともに恒生銀行のカウンターにて現金又は小切手で支払うか、恒生銀行のEバンキングでの支払いとなります。学費を支払っていないとその後の手続きが滞ったり、コース登録ができなかったりするので、早めに支払った方がスムーズです。

≪香港IDの申請≫
大学学生証の発行には香港IDの取得が必要です。発行には1週間以上掛かるので、香港に到着したらまずID取得に行く、というくらいの方がよいと思います。携帯電話を契約したり、アパートを借りたりするときにも、IDがあった方がずっと話が早くなります(もちろんパスポートでも可能です)。
IDの取得だけならば、香港に7箇所あるイミグレーションオフィスのどこでも構いません。期間が許すのであれば、インターネットまたは電話でのブッキングサービスを利用して時間を予約して行けば待たされずに済みます。ただし予約できる日付は一週間から10日後以降です。
私の場合は予約する時間的余裕がなかったので、直接行きました。オフィスが開く前の朝8時半頃に到着しましたが、学生の夏休み期間であったため非常に混み合っており、既に長蛇の列ができていました。とはいえ手続きのための列ではなく、手続きのための時間指定券をもらうための列です。私が手にできたのは、午後3時半頃の指定券でした。尚、その日の受付分は朝9時半ごろには配布終了していたので、やはり早朝に行く方が安心のようです。

4 生活情報
≪住居≫
学部(本科)の学生であれば大抵学内の寮に住むことができますが、私の場合はMAへの留学だったので、寮は用意されていないことが事前に通知されていました。現在、外部にマンションを借りて生活しています。
学外に住む場合、まず物件が見つかるまでの間どこに住むかが問題になります。夏休みなどで空きがあれば、学内の寮に短期滞在することも可能なので、まず直接問い合わせて見ることをお勧めします。ホテルに泊まる10分の1の費用で済みます。例えば以下は、学内の外国人留学生のための寮です。私はここに4日間滞在し、その間に幸運にも住居を見つけることができました。

インターナショナルハウス:
http://www.cuhk.edu.hk/osa/ihouse/ver2/index2.htm

香港における住環境の概要は、学生課のサイト(中文大学生のみのクローズドサイト)から得ることができますが、最終的には自分の足で不動産屋めぐりをして決めるしかありません。私は大学に近い新界地域を中心に、いくつもの不動産屋を回り、条件に該当する物件が見つかったら連絡してくれるよう声を掛けておくという方法を取りました。するとかなり頻繁に連絡が来ます。中には的外れのものもありましたが、数日後に納得できる物件に出会うことができました。私は「最低限の家具付き」という条件で探しました。多くはありませんが、大家さんが暮らしていたまま、全ての家具を残していくというパターンもたまにあります。契約の際、家賃の2か月分をデポジットとして大家さんに、半月分を手数料として不動産屋に支払う必要がありました。なお香港では、不動産屋は大家さんと入居者の紹介をするにすぎず、契約後に不動産屋と関わることはまずありません。家賃も大家さんに直接支払っています。
学外に住む場合、ルームシェアをすることも可能です。例えばインターネットのSMSのコミュニティを使ってルームシェアを募集する例もあるようです。

≪携帯電話≫
香港の携帯電話は、電話機にSIMカードを差し込んで使うタイプです。携帯電話会社でも電話機を売っていますが、別の場所で購入したものを使っても構いません。プリペイドにするか、月々払いの一般契約タイプにするかが選べます。私は契約型を利用していますが、国際電話などを掛けない限り、日本の携帯電話よりはかなり割安で済みます。

≪お金≫
私は、日本の銀行のインターナショナルカード(日本の口座からの引き落としになる)等々を利用しています。インターナショナルカードは日本の大手銀行ならば大抵発行しており、香港のほとんどのATMで利用可能です。香港には街を歩いていればたくさんのATMがあるので心配ありません。また中文大学学内に、恒生銀行の支店が入っています。中文大の学生であれば、恒生銀行での口座開設を前提に、「恒生学生クレジットカード」を作ることができます。学生の身分でもクレジットカードを作ることができるという意味では便利です。

≪言語≫

香港で最も多く話されているのは広東語です。ただし手続きをする大学の事務所などでは広東語、北京語、英語が通じます。また大学内の学食やスーパーでは広東語、北京語ですが、英語で注文してもたいていはわかってもらえるようです。学外をみると、市街地の店舗などでは北京語、英語が通じるところもありますが、郊外の店舗や市場などに行くと、やはり広東語が中心になっています。