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センターセミナー「映画から見る中東社会の変容 (『ロンドン・リバー』)」が開催されました

開催日:2015年4月28日

題材:「ロンドン・リバー」

講師:臼杵陽氏(日本女子大学教授)

報告

 2015年度最初の第16回中東映画研究会では、パリ生まれのアルジェリア系監督ラシード・ブーシャーレブ氏による『ロンドン・リバー』を取り上げ、日本女子大学の臼杵陽教授にコメントを頂いた。
 直近ではフランス紙襲撃事件やチュニジアの博物館襲撃事件、ケニアの大学襲撃事件等を想起させるが、本作は2005年7月7日にロンドンで実際に発生した襲撃事件を取り扱ったものである。具体的には、この事件に巻き込まれ行方不明となった子どもたちの消息を追う親たちを中心に、ロンドンを舞台として交差する人々の様々な背景と心の機微を捉えた作品である。
 コメンテーターの臼杵教授より本作を理解する上で重要な指摘が幾つか提示された。すなわち、二人の主人公の設定をはじめとして、作品の随所に散りばめられた「二分法的世界観の反転」、遠景/異質な存在としてのアラビア語の描写、隠れたテーマである「イスラモフォビア」の存在、親たちが持つ「帝国の周縁部出身」という共通項、「加害者と被害者の構図」等である。さらに、主人公の母親の出身地がイギリス国内でも特殊な位置付けにあるガーンジー島に設定されていることや、イギリス国内のムスリムのエスニシティの多様性等についても指摘がなされた。80分という比較的短い本作品は、極めて多様なイギリス社会の現状を凝縮する形で描きだしていることが理解された。ブーシャーレブ監督には、第二次世界大戦中に仏の「解放」のために闘った北アフリカ出身の兵士を描いた『デイズ・オブ・グローリー』という作品があるが、臼杵教授によると、非常に明確で共通したメッセージ性が見出されるという。
 会場からも様々な観点からの多くの質問やコメントがあり、活気のある意見交換が行われた。全体的に、子どもへの愛と喪失感、悲しみを「共有」することで徐々に宗教や文化の違いを乗り越える親たちの姿を描き出す本作の考察を通して、「テロとの戦い」が政治的言説空間を占拠する困難な時代の多文化共生の可能性について考える機会となった。 (報告:井堂)

当日の様子

開催情報

【題材】  『ロンドン・リバー』
 アルジェリア・フランス・イギリス制作、2009年
 監督:ラシード・ブーシャーレブ
 英・仏・アラビア語音声、日本語字幕

【テーマ】「共有」
2005年の同時多発テロ発生後のロンドンで、行方不明になった子どもの消息を追う親たちの物語。
子どもへの愛と喪失感、悲しみを「共有」することで宗教や文化の違いを乗り越える親たちの姿を描き出す本作を通して、「テロとの戦い」が政治的言説空間を占拠する困難な時代の多文化共生の可能性について考えてみたい。

【主催】 中東映画研究会

【共催】
東京大学・東洋学研究情報センター・セミナー
東文研・班研究「中東の社会変容と思想運動」

準備の都合上、事前に下記のアドレスまで参加希望のご連絡をお願いします。
mecinema2014[at]gmail.com ※アドレスが変わりました。こちらにご送付ください。




登録種別:センター関連
登録日時:FriMay809:59:242015
登録者 :長澤・後藤・酒井・藤岡
掲載期間:20150428 - 20160508
当日期間:20150428 - 20150428